『わたしに還る、ゼロの扉』

― 第5回 ―

誰かの言葉に傷ついたとき、

思うように行動できなかったとき、

失敗したと感じたとき。

心の中で、小さな声が聞こえることがあります。

「なにやってるの、わたし」

「またダメだった」

「どうせ」

静かだけれど、どこか責めるような声。

その声を、いつの間にか

“正しいわたし”の声として受け取ってしまう。

でもあるとき、ふと思いました。

このわたしの声、

ほんとうに「正しいの」のかな?

もしかしたら…

昔、誰かに言われた言葉。

頑張らなきゃ愛されないと感じたあの頃の記憶。

そうやって無意識に心にしみ込んでしまった“幻の声”を、

わたしは長いあいだ、正しさとして背負ってきたのかもしれません。

責めていたのは、

誰でもなく、わたし自身だった。

「もっとできるはず」

「ちゃんとしなきゃ」

そうやって、わたしはわたしにムチを打っていた。

でも、ゼロの視点で立ち止まってみたとき、

こんな気づきがふと、胸に届いたのです。

できない日も、泣きたい日も、

ちゃんと、わたしはわたしを生きていた。

責めるのをやめたとき、

代わりに聞こえてきた声がありました。

「よくここまでがんばってきたね」

「今日も、ありがとう」

その声は、

静かであたたかくて、

とてもとても、やさしかったのです。

【今日の問いかけ】

あなたが最近、自分にかけていた言葉はなんですか?

その言葉は、ほんとうに“いまのあなた”が必要としているものでしょうか?

【そっと、扉の向こうへ】

心の中にある「わたしへの声」を、

少しだけやわらげてあげたいと思ったとき。

ひとりでは難しくても、

そばで静かに寄り添ってくれる存在がいるだけで、

世界の色が変わっていくことがあります。

カウンセリングでは、

責める声ではなく、「ほんとうの声」を一緒に聴いていきます。

自分を責めてしまうあなたも、

その奥にいるやさしいあなたも、

どちらも、あなたです。