「わたしに還る、ゼロの扉』
― 第4回 ―
ふとした拍子に、
胸の奥がぎゅっとしぼむようなことがあります。

誰かの何気ないひとこと。
ふいに目にした光景。
夜更けの、あまりに静かな音。
それは、まるで
“忘れていた感情”が、ふわりと顔を出すような瞬間です。
悲しみって、不思議な感情です。
表に出すと「弱い人」だと思われそうで、
無意識のうちに、そっと引き出しにしまってしまう。
でもね、
悲しみは、ただただ、
「わかってほしい」だけなのかもしれません。
無理に消そうとしなくても、
泣かないでがまんしなくても、
ただ、そばにいてほしい…
そんなふうに、心のどこかで願っていたりするのです。
ある日、
何年も前の出来事を思い出して涙が出たことがありました。
「なんで今さら…」って、自分でも驚いたけれど、
そのとき、こう思ったのです。
ああ、わたしは、
あのとき悲しむ時間すら許さずに、前を向こうとしていたんだなあって。
ゼロの視点で見つめると、
感情は「良い・悪い」ではなく、ただの“サイン”になります。
怒りは「守りたかったもの」
不安は「信じたかったもの」
そして悲しみは…
「ほんとうは、こうしてほしかった」という、願いの記憶かもしれません。
もし、今
心が少しだけ痛むことがあるなら、
それはあなたの心が「話したがっている」のかもしれません。
どうか、耳を傾けてあげてくださいね。
【今日の問いかけ】
悲しみは、あなたに何を伝えたがっているでしょうか?
「ほんとうは、こうしてほしかった」と思っていたことはありますか?

【そっと、扉の向こうへ】
感情にふれることは、ときに勇気がいります。
でも、そこから目をそらさないやさしさが、
あなた自身を深く癒してくれることもあります。
ひとりで受け止めきれないと感じたときは、
どうぞ安心できる場所で、そっとその扉を開いてください。
カウンセリングでは、
あなたの感情が“安全に話せる場”であることを
なによりも大切にしています。
涙も、ため息も、
ほんとうは愛しいあなたの一部なのですから。